競合店を敵から味方に変える商圏分析

●震災以後の変化。

2011年の3.11東日本大震災は、私たちの価値観に様々なインパクトを与えました。「絆」が同年を代表するキーワードとなったように、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を考えていこうとする機運が自然に拡大しています。企業活動も更に社会価値を追求する方向に大きくシフトしてきています。

この流れは、当社の中心業務である商圏分析の考え方にも影響が出始めています。今回は、過去に携わった大型店の商圏分析例からこの変化を見ていこうと思います。

「商圏内の業種と競合しない関係をつくりながら商圏自体の魅力を上げていきたい。」
「足りない業種業態や、一歩生活のクオリティ感のある新しい業態を導入したい。」

このような視点で、商圏分析をしていきたいという企業が確実に増えてきています。

●経済価値のみから社会価値プラスの方向へ。

かって、大型店の出店は、ブランド力のあるパワーテナントを主に導入したり、規模で他店を圧倒したり、自店の経済原理のみが先行していたケースも少なくありませんでした。結果、どこにでもある施設となり、近隣に更に規模が大きい同様な店舗が出店すれば自身の競争力も失い撤退せざるを得ないような状況も生まれていました。

社会価値を追求する視点では、例えば、歴史の積み重ねによって、街の魅力をつくりだしている集積度が高い業種を更に魅力的にしたり、商圏に不足している業種を補完し、街の利便性を上げたり地域貢献発想が先にきます。

つまり、規模や競合シェアという視点から、経済的な成立性を前提としながら、商圏内外のポジショニングや、独自性を活かした生活価値提供などへのシフトです。こういった課題に応えられる商圏分析方法が必要になってきています。

●理念からスタートする生態学的アプローチ

クライアント企業の理念とも言えるこのようなマーケティング視点からスタートし、そこから分析方法、調査項目へとブレイクダウンしていきます。

マーケティング視点としては、企業と顧客の両方に対する価値を向上させる「ブルー・オーシャン戦略」と言えます。周辺の業種業態と巧みに棲み分けをして、過度な競合状況であるレッド・オーシャンにならないポジションを探ることです。ここからの考察は、生態学的なとらえ方です。商圏全体が魅力的に便利になって行く方向性を構想します。競争原理にだけ従うのでなく、地域と共生を図っていく発想です。

分析では、業種業態毎の出店余力や成長性、また、コレスポンデンス分析などを使った客観的な街区のポジショニング分析で商圏特徴を読み解いていきます。実際の調査では、定量的に居住者、商業、買い物実態、動向を把握するのはもちろんのこと、定性的に街の歴史、これと関連する街区評価なども重視されるようになってきています。

この順序が、調査項目から始まるように逆になってしまうと、機能する商圏分析は出来ません。一通りのデータを集めて満足してしまう、多くの商圏調査が陥りがちな結果に終わってしまいます。

●ブルー・オーシャン戦略。店舗が位置する街の魅力拡大へ。

「競争ではなく、商圏内既存業種と相乗、補完関係を持ち、また顧客への生活価値提供を考え出店する。」

相談や依頼を受けている業務からは、確実にこのような方向に進んでいることが見て取れます。このような視点で、様々な開発が進めば、この「店舗生態系」で街自体が、魅力的で利便性が高いものに自然になって行くと思われます。当然、自店も地域の人たちに支持され、長いライフバリューを獲得するのではないかと考えます。

「競合店も、自然と味方になる出店」と言えるのではないでしょうか。

 

商圏全体の価値を上げる方向に出店、商圏分析の方向
も変化。

 

(当社業務事例集「店づくりを成功させる6つの秘訣」2013年より)

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