仕事場を郊外に移してみた

―郊外、時々都心のワークライフー

●オフィスが都心から離れている

新型コロナによるテレワーク普及などの影響もあり、都心からのオフィス離れが進んでいる。オフィス仲介大手の三鬼商事によると、都心部のオフィス、7月の平均空室率は2.8%で、21か月ぶりに2%を超えたという。

その要因ともいえるテレワークの実施率は、東京都区部で55.5%にも上り、全国でも34.6%の水準である。また、東京圏のテレワーク経験者88.5%が、利用希望と継続への意識も高い。


「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府2020年/2%未満は値表記省略)

そんな背景の中、当社も仕事場を26年間拠点としてきた渋谷から、自宅近くの田園都市線、市ヶ尾駅へ移転した。

「はたして仕事場の郊外移転は正解なのだろうか?」

郊外移転を考えている方たちに参考になればと思い、その体験をまとめてみた。

●仕事場を郊外に移した理由

コロナ禍は、従来当たり前と思っていた価値観を変える良いチャンスでもある。仕事場を郊外に移した主な理由は、次のようなものである。

まず、通勤時間。自宅から渋谷の仕事場までは、ドアトゥドアで1日往復約3時間弱の通勤時間だった。新聞や本を読んだりしていたとしても価値ある時間とは言い難い。

また、何といっても渋谷の人混み。これには閉口していた。朝はさすがに少ないが、時間と共に人が湧き出してくる。いつも帰宅は22時過ぎで、人が多くて歩きにくい。典型例が、もうすぐ始まるハロウィン。この混雑度は、普通じゃない。まるで通勤ラッシュの駅ホーム状態である。

逆に、渋谷のメリットはターミナル駅であるため、クライアントや外部スタッフとの打ち合わせの利便性だろう。これが、テレワークの進展であまり意味を持たなくなったことが、その理由として大きな点だ。

つまり、わざわざ毎日渋谷に行く理由がなくなってきたという事である。


↑渋谷と市ヶ尾の駅前比較

●郊外に移転して分かったこと

郊外に仕事場を移転し捨てたものと得られたものをまとめてみた。

まず、(自宅に近い)郊外仕事場で得られたものは、何といっても通勤時間の短さである。渋谷までの1日の通勤時間が、郊外だったら1週間の通勤時間になる。電車に乗っているのは徒歩、待ち時間を除いて5分程度だ。これだったら混雑も気にならない。車でも10分程度で、パーキングも空いており料金も安い。

そして、圧倒的な混雑度の低さ。様々な面で、密にならない快適な環境である。混雑度を比較してみると、現在の市ヶ尾駅周辺は、同日同時間で渋谷の25%程度の混雑度である。街も快適に歩ける。


↑NTTドコモ空間統計メッシュマップ
(携帯電話のGPSを利用した人出(滞留人口は)は、渋谷12,800~25,600人、市ヶ尾3,200~6,400人で市ヶ尾は渋谷の1/4の混雑度)

逆に、郊外仕事場で捨てたものは、何といってもショッピング・飲食の選択肢である。郊外の拠点都市でもなければ、この不便さは免れない。

渋谷であれば、徒歩圏に西武、東急と百貨店が2店、SCもパルコ、ヒカリエ、ストリーム、スクランブルスクエア、フクラス、大型店はハンズ、ロフトなど数多い。また、東急文化村を筆頭にシアター、ミュージアム、ライブハウスなどエンターテインメントも充実。仕事場のあった奥渋谷は、オーナーシェフの飲食集積エリアでもあった。UA、ジャーナルスタンダード、H&M、Zaraなどセレクトショップ、ファストファッションも数多く集積。

対して、現在は駅前に東急ストア、SEIYU、成城石井、フィットケアデポなどのいわゆるエッセンシャル・リテールがほとんど。専門店・飲食の選択肢は限られている。

まとめると、得られたものは何といっても「ゆとり」ある環境と時間、捨てたものは、街のリアル情報量。コンセプトワークなど多少でもクリエィティブな領域に関わっている人間としては残念だ。まぁ、裏腹の関係ではあると思う。つまり、ゆとりは得られるが、リアルの情報は捨てることになる。

●入れ替わった都心と郊外

ただ、webプロモーションは地域を選ばずマーケティング支援に役立つ。当社でもここ10年位、新規のクライアントは、ほとんどwebからの問い合わせで、さらに、業務打合せや進行は、SkypeやZOOMを使ったリモートが自然になってきている。まさにeシフトしているといえる。

また、郊外は都心に近い。郊外といっても都心から電車で30~40分、距離で30km程度である。通勤をしていたことを思えば、都心に出ることは難しくない。これを活用すれば、郊外と都心のメリットをともに得ることができるという事。

「毎日都心、休日郊外」から「毎日郊外、時々都心」への逆転。

郊外と都心のポジションが入れ替わる訳である。郊外ならではの「ゆとり」を日常的に享受しながら、時々、都心へ出てリアルの情報を楽しむというスタイルである。このようなことが、テレワークの進展と働く意識の変化でニューノーマルになりつつある。

着実にこの変化は進んでいくと推測される。さて、皆さんは、この都心と郊外の関係を、どう考えるのだろうか。

 

(ameblo 2020.8)